近年は多彩なECサイト構築ツールが登場し、ネットショップを開業する際のハードルは大きく下がりました。とはいえ、どのツールを使うべきか、迷ってしまうという方もいるでしょう。そこでこの記事では、最適なものを比較検討できるように、19種のツールをリストにまとめました。また、サイト構築にかかる費用の相場、ツール選びのポイントまで解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ECサイトの構築ツールとは
ECサイト構築ツールとはその名の通り、ECサイトを立ち上げ、運営していくための機能をまとめたシステムのことです。以前は、ホームページの作り方と言えば開発会社に依頼する方法が主流で、大規模で複雑なECサイトを既存のシステムを使わずにゼロから構築しようとすれば、数千万円というコストがかかることもありました。しかし現在は、商品のリスト作成から在庫管理、注文処理、決済まで必要な機能がツールに組み込まれているため、初心者でも簡単なECサイトの構築方法を選べるようになりました。もちろん、事業に合わせてサイトのデザインや機能をカスタマイズすることも可能です。
ECサイト構築ツールの種類
ASP型
ASP(Application Service Provider)は、自社サイトに組み込めるショッピングカートやページ管理などのシステムをインターネット上から提供してくれるサービスのことです。自社サイトがベースとなるためデザインの自由度が高く、店舗の個性を強く反映させることができます。また、月額利用料のため初期コストが低く、安全性やサポートが充実しているツールが多いことも魅力です。自前でサーバーなどを用意する必要がなく、ホスティングなどの各種リソースも含めて提供される「クラウド型」のサービスもあります。
モール型
既存のオンラインショッピングモール内で、店舗を開設する方法です。モール型の場合、個別にECサイトを作る必要はありません。また、すでに知名度が高いモールを利用するため、集客しやすい点も強みです。出店の手順はマニュアルにまとめられていることが多く、手軽に商品の販売を開始できるため、初心者でも始めやすいEC事業といえるでしょう。
オープンソース型
オープンソース型のECサイト構築ツールは、プログラムのソースコードが公開されているため、基本機能のみであれば無料で利用できます。できる限り低コストでECサイトを作りたい、といったケースで活用できるでしょう。ただし、サーバーなどの環境を自分で用意する必要があり、カスタマイズにはプログラミングのスキルや知識が求められるため、本格的に活用するにはハードルが高めと言えます。
パッケージ型
パッケージ化されたシステムを用いて、ECサイトを開設する方法です。ECサイト構築パッケージは完成されたシステムとして提供されるため、他のツールに比べて高機能なことが特徴です。独自性の高い、自社のニーズに合った中~大規模のECサイトを構築したいというケースではパッケージ型を選ぶことになるでしょう。ただし、買い切りのため初期費用として数百万円がかかるものも多く、カスタマイズを行なう場合にはさらに開発費が必要となります。費用対効果を考慮しながら、自社に適したパッケージを選ぶことが求められます。
ECサイト構築ツールの比較
ASP型のおすすめ10選
1.Shopify(ショッピファイ)
Shopifyは、ECサイトを開設・運営するためのオールインワンツールとして170以上の国でで利用されており、数百万件ものショップ開設実績をもつ世界的なサービスです。多彩な見た目から選べるテンプレートなどを活用して初心者でも簡単に構築できるうえ、実店舗と在庫管理を同期できるPOS機能や、リアルタイムにデータを分析できる豊富なマーケティングツールなども標準機能として整っているため、すぐにビジネスを始めることが可能です。また、デザインは自由にカスタマイズできるほか、専用のアプリストアでは7,000種以上の追加機能やテーマが提供されています。大手ショッピングモールとの連携も可能なうえ、決済方法ではクレジットカードにApple Pay(アップルペイ)やGoogle Pay(グーグルペイ)、Amazon Pay(アマゾンペイ)など多彩なプラットフォームを利用できるため、越境ECを視野に入れている人にもおすすめです。
2.ecforce(イーシーフォース)
ecforceは、販売成果を高めるための豊富なマーケティング機能が特徴のECサイト構築ツールです。ワンクリックで決済できる機能や、顧客のサイト離脱を防ぐクーポンの提示機能など、購入率や購入単価を上げる機能が工夫されています。また、ノーコードでのサイト構築から、フルカスタマイズの独自サイト構築にも対応します。
3.カラーミーショップ
カラーミーショップは、国内で広く利用されているECサイト構築ツールです。ブログ形式でページを管理できるWordPress(ワードプレス)と連携する公式プラグインも提供されており、容易に商品ページを作ることができます。サイト構築の基本テンプレートは80種類以上が用意されており、カスタマイズも可能となっています。
4.BASE(ベイス)
BASEは、手軽さを大きな特徴としたサービスです。商品が売れた時の手数料とサービス利用料のみで、初期費用や月額費用が不要というプランも提供しています。また、商品説明文をAIが自動生成する機能なども用意されており、サイトの開設手続は30秒、商品の販売開始まで30分で完了できるとも謳われています。
5.STORES(ストアーズ)
STORESも、初期用や月額料金のかからない「フリープラン」が用意されており、リスクを抑えて出店が可能となっています。また、専門的なプログラムの知識がなくても簡単に利用できるよう、開設などを電話でサポートしてくれるサービスや、ノウハウを共有するウェビナーに参加できることも特徴です。サイト管理や販促機能の操作性の面でも、シンプルでわかりやすいことが重視されています。
6.MakeShop(メイクショップ)
MakeShopは、クーポン・ポイント機能や、ショッピングモールとの出品連携、まとめ買い、定期購入など、650種類を超える機能から選んでカスタマイズできる、拡張性の高さが強みです。越境ECにも手軽に対応できるよう、管理画面から申し込むことで海外からの購入・配送代行事業者に連携されるようになっています。
7.aishipR(アイシップアール)
aishipRは、スマートフォンを利用する顧客のニーズに特化したECサイト構築ツールです。複数のページにわたる遷移を必要としないカート機能や、入力ミスを減らす補助機能など、スマートフォン利用者の離脱を防ぐ機能が充実しています。また、Instagram(インスタグラム)などのSNSと連携した販促機能も特徴となっています。
8.ebisumart(エビスマート)
ebisumartは、テンプレートなどを活用して手軽にECサイトを構築できるのに加えて、APIを用いた柔軟なカスタマイズ、CRM等の外部ツールとの連携にも対応しています。カスタマイズ等についてアドバイスを行なう専任の担当者によるサポートや、他社の活用事例を知ることができる少人数制ワークショップなど、運用フェーズでのサポートが充実していることも特徴です。
9.futureshop(フューチャーショップ)
futureshopは、自社ECサイト以外も含めたオムニチャネル戦略を推進する機能が充実していることが特徴です。ECサイトで注文した商品を店舗で受け取れる仕組みや、店舗の在庫をオンラインで表示する機能などを備えています。オンラインショップだけでなく、実店舗を構える予定がある人にも適しています。
10.W2 Unified(ダブルツーユニファイド)
W2 Unifiedは、ASP型のカートシステムのみの利用から、大規模なECサイトにも対応可能なカスタマイズモデルへのシームレスな切り替えが可能なサービスです。中長期的な拡張を見すえて導入したい、というケースに有効でしょう。複数ブランドの一元管理や、実店舗と連携するオムニチャネルにも対応します。
モール型のおすすめ3選
11.楽天市場
楽天市場は、年間流通総額5.6兆円(2022年)を誇る大規模なオンラインショッピングモールです。利用者数も1億以上にも上るため、集客を見込みやすいことが利点です。また、ECコンサルタントが顧客の購買動向などから販売戦略を提案するといったサポート体制も、整えられています。
12.Amazon(アマゾン)
Amazonは、世界的にもトップクラスの事業規模と知名度をもつオンラインショッピングモールです。日本においても、月間のユニーク訪問者数はデスクトップから1,326万人、モバイルからは4,306万人とされています。在庫管理から配送まで代行するフルフィルメントサービスなども利用すれば、運営にかかる手間を減らしてより販売業務に集中できるようになるでしょう。
13.Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、ヤフー株式会社によって運営されるオンラインショッピングモールです。月間の利用者数は8,000万人を超えており、ソフトバンクやPayPay、LINEなどグループ企業のサービスと連携した集客が期待できます。さらに、出店に関わる初期費用や月額の固定費などが不要なため、多くの事業者にとって使いやすいサービスとなっています。
オープンソース型のおすすめ3選
14.EC-CUBE(イーシーキューブ)
EC-CUBEは、35,000以上(推定)の店舗で利用されており、ダウンロード数は180万件に上る国産のオープンソースECサイト構築ツールです。基本機能としてECサイトの運営に必要な商品や顧客の管理、売り上げの集計といった機能はもちろん、カートや会員ページのデザインを自由にカスタマイズできる点が強みです。また、実績が多い分、有料で構築・運用支援を手がけているパートナー企業も多く、ノウハウが蓄積されていると言えます。
15.Welcart(ウェルカート)
Welcartは、CMSツールであるWordPress上で動作するECサイト構築プラグインです。WordPressを利用している場合には手軽にオンラインショップを開設でき、管理画面も共通となるため効率的な運営が可能となります。拡張プラグインも用意されており、クーポン機能やデジタルコンテンツのダウンロード販売にも対応することができます。
16.osCommerce(オーエスコマース)
osCommerceは、自由度の高いカスタマイズが可能なオープンソースのCMSです。欧米を中心に利用されており実績も豊富ですが、使いこなすには英語力も求められます。開発コミュニティには30万人以上のユーザーが参加しており、9,000件以上のアドオン(拡張機能)が提供されているなど、活発にアップデートが続けられています。
パッケージ型のおすすめ3選
17.ecbeing(イーシービーイング)
ecbeingは小規模なスタートアップから大手企業まで、多岐にわたる業種のECサイト構築と運用をサポートするECサイト構築ツールです。200名以上の体制でマーケティングやデザイン制作の支援を行っており、インフラ環境についても24時間365日の有人監視体制を提供していることが特徴です。
18.SI Web Shopping(エスアイウェブショッピング)
SI Web Shoppingは、年商数十億円以上を目指す中規模EC事業者から、商品点数が数百万点になる大規模ECサイトにも対応するパッケージシステムです。1サイト1ライセンスというシンプルなライセンス体系を採用しており、サーバーが増えても費用は変わらないため、事業を拡大させていく場合にも対応しやすいという特徴があります。また、業種や業態を問わずBtoCからBtoB、越境EC、オムニチャネルまで複雑な開発にも対応できます。
19.楽楽リピート
楽楽リピートは、リピート通販とDtoCビジネスに特化したECサイト構築ツールです。分析機能やアップセル/クロスセル機能、訪問者の傾向に合わせた商品を提案するパーソナライズ機能なども、標準機能として提供されます。また、お届け周期や休止処理を容易に管理できる定期購入機能の充実も、大きな特徴となっています。
ECサイト構築の費用相場
独自ドメインのサイトでも、「ASP型」「クラウド型」のツールを活用した小規模なECサイトであれば構築時のコストは100万円未満で済むこともあります。また「オンラインショッピングモール」に出店するだけであれば、相場は10万円程度です。ただしこれらのツールの利用には、月々の利用料や販売マージンも必要となってくることは留意しておきましょう。
より独自性の高いECサイトを構築する場合には、高機能な「パッケージ型」のツールを利用する方法もあります。こうした中規模のサイト構築では、200万~500万円ほどが相場となるでしょう。「オープンソース型」ツールを利用すれば初期コストを100万円~に抑えることもできますが、専門的なスキルや知識が必要となります。
ECサイト構築ツール選びのポイント
デザイン性
多くのツールにはテンプレートが備わっており、活用するとデザインやレイアウトを簡単に設定できます。テンプレートが多いツールを選ぶことで、販売する商品や自社ブランドにより適したサイトデザインを実現しやすくなるでしょう。ただし、ツールによってはカスタマイズ性が乏しい場合もあるため注意が必要です。
決済方法
決済方法が豊富に用意されているかどうかも、ツール選びの際に検討しましょう。クレジットカードはもちろん、コンビニ支払いやID決済など、多様な決済方法に対応しているツールを選ぶことで、顧客の利便性を高めることができます。
販促機能
売上アップを図るためには、顧客へ商品の購入を促せる機能があると役立ちます。商品のレビュー機能やクーポンの発行、メールマーケティングなどの機能が備わっているツールを選ぶことで、効果的に売り上げを伸ばせるでしょう。
セキュリティ対策
ECサイトの構築において、セキュリティ対策も重要な比較ポイントのひとつです。顧客の個人情報やクレジットカード情報を扱うため、サイバー攻撃のリスクが常に存在します。決済時の安全な通信を保証するSSLや、外部からの不正アクセスを阻止・検知する機能、二段階認証によるアカウント保護、データの暗号化機能などがチェックポイントです。顧客の信頼を得るためにも、セキュリティ対策は決して軽視できない要素です。
サポート体制
ECサイト構築ツールを選ぶ際には、サポート体制の手厚さも確認しましょう。特にECサイト運営の経験が浅い、または未経験者の場合は、何かしらのトラブルがあった際に対処方法がわからずビジネスが停止してしまうおそれもあります。ツールによっては、ECサイトの構築手順に加え、サイト運営中に生じた疑問やマーケティングなどに相談に応じる専門的なサポートを提供している場合もあります。
まとめ
ECサイト構築ツールを使うことで、未経験者でもECサイトを開設できます。ツールを選ぶ際は、機能性やセキュリティ対策、サポート体制を考慮しましょう。
低コストで豊富なテンプレートや高いカスタマイズ性を兼ね備えた、Shopifyは特におすすめです。マーケティング機能も充実しているため、集客を増やす施策を打つことも可能です。無料体験も実施していますので、まずはお気軽に活用してみてください。
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よくある質問
ECサイトを構築するにはいくらかかりますか?
- 小規模なECサイト:100万円未満
- 中規模なECサイト:200~500万円
- 大規模なECサイト:1,000万円~
上記がECサイトを構築する際にかかる費用の目安です。ECサイトに求めるデザイン性や機能性、選択するECサイトの構築方法によって金額は変動します。
ECサイト構築にどれくらいの期間がかかりますか?
ASP型やモール型のECサイト構築ツールを使った小規模のECサイトであれば、数時間から1週間ほどで立ち上げられます。一方、オープンソース型を使用する場合は、カスタマイズも必要なためサイト構築に3か月ほどはかかるでしょう。数万点もの商品を扱う大規模なECサイトをゼロから構築する場合には、年単位の時間を要することもあります。
おすすめのECサイト構築ツールは何ですか?
- Shopify
- ecforce
- カラーミーショップ
- BASE
- STORES
- MakeShop
- aishipR
- 楽天市場
- Amazon
- Yahoo!ショッピング
- ebisumart
- futureshop
- W2 Unified
- EC-CUBE
- Welcart
- osCommerce
- ecbeing
- SI Web Shopping
- 楽楽リピート
上記がおすすめのECサイト構築ツールです。スマートフォンでの買い物に特化したツールやリピート販売に注力したツールなど、ツールごとにさまざまな特徴があります。各種サービスを確認のうえ、自分のビジネスに最適なツールを選択しましょう。
文:Yukihiro Kawata イラスト:Till Lauer